前回、紹介したビクトリア州の幼稚園の仕組みについては、下記のURLからどうぞ。
移民大国であるオーストラリア。
こうしてこの国に住んでいる私たち日本人以外でも、海外で生まれ育ち、子供をここで育てるにあたりいろいろと悩んでいる親御さんたちは、思っている以上に多いです。
私は27年ほど幼児教育に携わってきましたが、中でも多い質問が、
”幼稚園と保育園って何が違うの?“ということです。
結論からお伝えすると、
1,幼稚園プログラム利用と保育園では利用料金が違う
2.保育を行う幼稚園教師の資格が保育士と違う
3.開園時間、時期、お預かり時間が違う
保育園ってどんなところ?
2023年が明けて間もなく、ニュースで州ごとの保育料金が出ていました。
ビクトリア州は国内でもトップ1,2位を争うほど料金が高く、子供の年齢によって多少の差は出ますが、一人を一日にあずけると$200近くかかる計算になっていました。 親の所得により多少の割引がつくとしても、高いですよね。
保育園 (Child care CentreやEarly Learning Centreなどとよばれる)
早朝6時半ごろから夕方の6時半ごろまで開いていて、生後6か月の子供から就学時(6歳までの子供)を預かることができるのが保育園です。
ほとんど働く親御さんたちのためにシステムがくまれていて、オムツからおやつ、温かいランチまで出るため、子供は自分の着替え以外もっていくものはありません。
経営母体は、公立の自治体経営もありますが、私立保育園である場合が多数です。
園長の代わりに、Directorとよばれる職員が園にいることが多いです。
Directorらが無資格者であっても他の教師らの数と子供の人数さえ守られていれば、問題はありません。
実際の保育は、保育士(Diploma かCertificateIIIという資格)が各年齢ごとに分けられたグループ内でおこなう事がほとんど。小さい園や朝夕の園児が少ない時など時間帯によっては、異年齢の複合グループとしてまとめて保育されます。
多くの保育園は、基本、カレンダー祝日やクリスマス、新年以外は年間50週ほど開けているところが多いです。
幼稚園(Sessional Kindergarten またはStandalone Kindergartenと呼ばれる)公的な、地元のカウンセルなどが経営母体になっていて、1クラス20名から33名ほどの園児を1人または2人の補助職員と一緒に保育します。子供の人数に対しての大人の数は、各州できちんと決められています。
各園の保育方針(Philosophy)のようなものはありますが、日本のように園長はいません。
幼稚園教師が日々の責任者という立場になり、保育以外でも、ご父兄からのお問い合わせや、訪問者などの対応にも応じます。
先の記事でもお伝えした通り、2023年からビクトリア州は、4歳児に限らず3歳児も幼稚園プログラムが完全無料になりました。
4歳児は、小学校就学前に週に15時間、3歳児は、週に5時間から15時間(地域によって時間数が違います)の幼稚園教育を受けられることができるようになり、入園希望者が増加しました。
幼稚園は、ビクトリア州文部科学省の管下にいるため、保育期間は学校のタームと全く同じで4学期制になっています。
その合間にあるスクールホリデーも同じタイミングで閉まります。2月が一年のうちの新学期になり、12月が学年末です。
4学期制のターム合間に、2週間のホリデーがあり、その期間は幼稚園は学校同様、お休みです。 働いている親御さんは、そのホリデーに合わせて、自分の有休をとるか、家族親戚などに子供を見てもらう予定を立てる必要があるでしょう。
幼稚園にはランチとおやつは持参で
幼稚園では、各自でランチやおやつを用意する必要があります。
3歳児であっても園に入園する頃には、おしめがとれている子供がほとんどですが、そうでない場合、おしめセットなども親御さんの方で準備する必要があります。
保育園でないので、万が一の着替え以外はおしめのセットはありません。
子供たちは保育中に自分で食べるランチや、おやつを各自用意したランチバッグに入れて、Water Bottle(日本の水筒とは違います)に入れた水と一緒に、持ってきます。
園児がそろえなければならない制服や、カバンなどは、ほとんどありません。(有名私立幼稚園などはべつですが)各自好きなもの、大体子供サイズのリュックに先の食べ物と、着替えを持たせて登園させます。
ビクトリア州内で、隔離された場所に住む子供たちが多い地域はまれなので、通園バスなどはほとんどありません。親または、許可された大人が、決まった時間に送迎することが義務になります。
どんな保育内容?
オーストラリアの幼児教育は、幼稚園プログラムであっても、保育園であっても、国が出しているカリキュラムをもとにして、幼児にふさわしい保育をすることが求められます。
幼児教育学を勉強した大学卒のプロフェッショナルの幼稚園教諭が、幼児期の子供にふさわしい教育を与えなければならないと、ビクトリア州政府が指針をたてています。
幼稚園で子供たちは、認可を受けた教員から遊びを通じて多くのことを学びます。
例えば、言葉や算数やパターンだけでなく、友達作りや譲り合いや話の聞き方なども学び、さらには小学校進学に必要な力も身に付けていきます。
あくまでも、遊び通じて(Play-based)子供たちが必要なスキルや成長を総合的に促していくのが幼稚園教育です。
フラッシュカードを見せて子供に知識を詰め込もうとしたり、発達に合わないような座って文字や数字を書かせるような方法は、皆無と言っていいでしょう。
幼稚園教師と保育士の資格
幼稚園教師は大卒の資格者で、Victorian Institute of Teachingに登録された者でなければなりません。
それが、州政府が認可している幼稚園プログラムの条件でもあります。
しかし、2023年現在でも、ビクトリア州内だけで4千人以上の幼稚園教師が不足していると言われているため、大卒のどの教科の教師資格も持つ人ならば、幼稚園教師として、保育を現場で行ってもいいという特例が取られています。
これを読んでいる方も、テレビなどの広告をご覧になった事があるかもしれませんが、有資格者を増やすためにビクトリア州教育省は、各大学と提携して数多くの奨学金制度を導入しています。
幼児教育に関心がある方は、今が資格習得のチャンスかもしれません。
>> ビクトリア州の幼稚園教師と保育士の違いについては、別ブログで
詳しくまとめています。
ご参考までに(https://www.hugskumu.com/qualification-of-kindergarten-teacher/ )
幼稚園と保育園の両方を利用する
州に15時間以上、子供を預けたいという親御さんがいる場合、幼稚園プログラムに行かせ、別の日には保育園に入れておくという預け方をすることもできます。
また、保育園内に設置されている、”幼稚園プログラム”ーこれももちろん保育士さんではなく、大卒の有資格者である幼稚園教師が行うプログラムにいれ、
そのプログラム後は、保育園のお部屋に戻ってご両親が迎えにくるまで、保育のケアを受けることができるという利用方法もあります。
ただ、幼稚園プログラムに申し込む子供は、文部科学省のシステムに登録され補助金がでるしくみになっているため、「Sessional Kindergartenに入れて、保育園内の幼稚園プログラムにも曜日が合うから入れちゃおう」というようなことは、できないようになっています。 Sessional Kindergartenに入れている場合、保育園内で受けるケアは、あくまでも保育となります。
上記のように混合で幼稚園と保育園を利用する場合、家族の収入とCentrelinkからの手当などを換算したうえで、保育料が変わってきますので、各自、このLinkを参考に計算してみてください。
(https://www.childcaresubsidycalculator.com.au/ )
またはCentrelinkへ直接、お問合せください。
Sessional Kinderに通わせたい親もいる
追加になりますが、毎年一定数の親御さんで、保育園に幼稚園プログラムがあるにも関わらず、わざわざ別の日にSessional Kindergartenに通わたい、つまり両方に通わせる選択を取る方々がいます。
保育園内に幼稚園プログラムがあり、認可されている大卒の幼稚園教師がいるのにわざわざ、Sessional Kinderに通わせてくるのです。
実際に親御さんの胸の内としては…
「経験ある教師に学校へ上がる前の準備をしてほしい」
「通わせる幼稚園内で、お友達を作って翌年、学校へ上がる時スムーズにネットワークができるようにしたい」
「生まれてずっと通っている保育園とは違う環境で学ばせたい」などがあるようです。
ちなみに、3歳児4歳児の幼稚園教育を終えての進学先ですが、Standaloneの幼稚園では、クラスのお友達と地域の同じ小学校へ上がるというケースがほとんどです。
したがって、子供が翌年入学する小学校に、同じ園のお友達が何人かいて、心強いという利点があります。
以上、幼稚園と保育園の主な違いについてお伝えしましたが、それぞれ家族のニーズとお子様にあった選択ができますように。